[コメント] レインマン(1988/米)
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まず心うたれたのが、レイモンドとチャーリーがダンスの練習をするシーン。ここは「心許した人にしか体に触れさせない」というチャーリーの造型が効いている感動的なシーンだ。が、ここでレイモンドがチャーリーを受け入れていたのかというと決してそうではなく、のちにレイモンドはチャーリーのハグを激しく拒絶する。「ただハグしたいだけなのに」と悲しみにくれるチャーリー。本作で最も胸を締め付けられたシーンだ。ここも前述のダンスのシーンがあったからこそのシーンだと思った。あれはレイモンドにとってはあくまでも「ダンスの練習」でしかなかったことが暗に示され、チャーリーの悲しみが増すわけである。ここは本当に悲しい。が、巧い演出だと感心した。が、この激しい悲しみのシーンがあるから最後、「チャーリーは僕の親友だ」と頭をそっと触れあう、静かな、それでも熱い感情が込み上げてくるクライマックスが映えるのである。ここまでくると、ジワッと瞳を潤ませながら、本当に巧いなぁと唸らざるを得ない。
こんなバリー・レヴィンソンの素晴らしい演出にも支えられ、役者陣も快調に芸達者ぶりを示す。実をいうと公開時に観たときは、ダスティン・ホフマンの攻めの演技が過ぎるように見え、トム・クルーズの受けの演技に助けられているという感を強く抱いたのだが、今回再見してみると、もちろんトムの演技は素晴らしいのだけれど、彼が攻めの演技を示しているときは、ダスティンがそれこそ歳の離れた兄のような懐の深さでそれを包み込んでいることがよくわかり、己の若き頃の鑑賞眼の低さが恥ずかしくなった。
あとは撮影のジョン・シールも彼ならば当然このくらいの仕事はするだろうという安定した仕事ぶりを見せていた。が、いかにも80年代的な音楽使いの軽さだけはいただけない。そこだけは惜しいと思った。
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