明らかに弟でしょうね。ラストで「弟と住みたいか，これまでの施設に帰りたいか？」と訊ねられて「わからない」と返事をするようになった兄も，少しは感情らしきものが芽生え始めたのかもしれないが，たとえ不純な動機からでも，結局は人の心がわかるようになった弟の方がはるかに成長したと思う。

あと，本当は自閉症の人がすべてレイモンドのように特別な才能があるわけではないだろうから，その意味では，この作品は都合よく作られていると言えるが，少なくとも，日常生活を普通に暮らせるという点が人間の才能のごく一部でしかない，ということをさりげなく描いていた点では好感が持てた。