捨て子の親を探す３人のホームレスのロード･ムービー｡

ストーリーは違うが展開的には『マイ･ビューティフル･ジョー』のような感じで､主人公たちが赤ちゃんのおかげで様々な奇跡に遭遇するところは似ている｡

映画としては『マイ･ビューティフル･ジョー』同様にどことなく死を感じさせそうなシビアな部分を織り込みつつもストーリー展開自体はほのぼのとしており観てて楽しい作品に仕上げているところは好感が持てる｡また要所要所で主人公たちを取り巻く人情ドラマが展開されほろっとさせられる｡随所で張られた伏線がラストの展開にきちんと生かされ機能しているところも素晴らしい｡

キャラ描写でも同監督の前作である『千年女優』では主人公の人物像にこだわり過ぎたために脇役の描写が弱かった感じがしたが今回は脇役キャラの個性までしっかりと確立されており､赤ちゃんの親を探す過程で主人公の3人がそれまで真剣に向き合うことのなかった家族や友人の問題に対して向き合うようになっていく展開が非常に感動的｡

最初は主人公たちが様々な奇跡に遭遇するという展開にややご都合主義的な印象を感じていたが､話が進むうちにこれが３人に命を救われた赤ちゃんのお礼という解釈ができ素直に展開を受け入れられるところもいい｡

ラストの奇跡のための伏線を少々張りすぎた感じで､ラストの展開に多少予定調和なものが感じられたのは残念だが､映画の全体のストーリー展開は観てて非常に楽しく､各登場人物たちのフォローがきちんとされていて､人情ドラマが好きな人なら文句なしに勧められる｡