コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] きけ、わだつみの声(1950/日)

私は戦争を知らない。だからこれがリアルなのかどうか判らない。ただこれほど鳥肌の立つ映像を見せ付けられたは初めてであり、演出とカメラの冷酷さに怒りすら覚える。公開当時、たった5年前の「日常の風景」を人々はどう見たのか?
sawa:38

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







部隊に置き去りにされた片脚の無い負傷兵が、杖を頼りに部隊の後を追う。家族の待つ故郷日本へ帰る為には歩かねばならない。だが、男は倒れる。

カメラは異様な長廻しで男が這いずり回る姿を追う。激痛、苦悶、哀願、懇願・・・この世のものとは思えない男の表情をカメラは執拗に、執拗に撮り続ける。さらに這いずり回る男に目をそむけたくなるが、それでも監督は演技を止めさせようとはしない。

背筋が凍る。男の芝居に圧倒される映像はもちろんだが、それ以上に、この凄惨なカットに何時までもOKを出さずにカメラを廻し続けた監督の冷酷さに鳥肌が立つのだ。

そこまでして観客に伝えたいものとは何か。もう充分ですと、こちらが「泣き」を入れても、それでも止めない執拗さとは何か?

ラストの砲弾の嵐の中で部隊が全滅していく様でも、同様に執拗な凄惨なシーンが続く。「もう勘弁してくれ、止めてくれ」観客である私たちがそう願う時、私たちは映像の中の一兵士と同化させられる。彼等もあの砲弾の嵐の中で願ったことはただひとつだろう。

「もう勘弁してくれ、止めてくれ」と・・・

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)直人[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。