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[コメント] 女系家族(1963/日)

映画が始まってすぐに船場の大店の瓦屋根を真俯瞰でとらえたショットがあり、「あゝ宮川だ」という感慨にひたる。
ゑぎ

 葬式のシーンのスペクタキュラーな画にも目を瞠るが、本作でも遺言状披露のシーンをはじめ日本家屋の見せ方が抜群に上手い。縁側のガラス戸の向こうの庭に花弁が落ちる画面。

 そして当然ながら役者達の演技合戦が大きな見所だが、主要登場人物は皆甲乙つけがたい出来だ。主人公を上げるとすれば映画の感情を締める役割の京マチ子か、或いは、主要なプロットをドライブする中村鴈治郎ということになるが、矢張りこの二人が実に面白い。私の趣味で云うと、鴈治郎を堪能することこそ本作の楽しみ方だと思う。

 ただし、鳳八千代高田美和もよく描けているし、浪花千栄子のリアクション演技にも感嘆する。田宮二郎北林谷栄のいやらしさもよく出ている。本作の北林谷栄は風呂場の後ろ姿で登場する艶めかしい役で、いつも婆さん役のこの人が、口調も変えて「女」を演じている姿を見ていると、何だか倒錯した趣を感じてしまう。そして勿論、若尾文子の造型も他の演者に負けない強さがある。彼女の不敵な笑いが目に焼きついてはなれない。しかし、若尾のラストは性格づけとして少々出来すぎ(賢すぎ)の感あり。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)緑雨[*]

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