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[コメント] ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎哀歌(1986/日)

飛び降りた先にはトランポリン、逃げる先には灯油缶と、ヒドいばかりのご都合主義の脚本。観客の視点も全然意識できておらず、要は見せたいものを羅列しているだけの作品です。なのにテルにすっかり高揚させられてしまい、ウッカリ☆5付けそうになった。
Myurakz

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 この那須真知子という人は、本当によく脚本家で食っていけてるなぁと感心させられます。スクラップ置き場にトランポリンがあるのを「ゴミなのよ、あってもおかしくないでしょ」と平気な顔で描き切り、崖から車で落ちる時も同じ手を使って下に船を置く。そりゃどれもこれも“あってもおかしくない”ことだけれど、そこをもっと何とかするのが脚本家の仕事だろうよ。

 しかも上記の辺りはまだ笑えるからいいです。問題はクライマックスのレストランのシーンですよ。そもそも草津にいたヒロシとトオルが船で来るのもおかしいんだけど、その時に「やったるぜぇ」って顔をしてたじゃないですか。それがレストランに着いたら急にしおらしくなっちゃう。しかもしばらくしたらそれが演技だったってことがわかって喧嘩に突入する。もうグチャグチャです。しおらしさが演技だったって喜びを観客に与えたいなら、最初の「やったるぜえ」は全く要らない。もし「やったるぜえ」でくるんなら、そこはそのままいきなり喧嘩に突入すべき。そんな起伏も考えていない脚本なので、やっぱり「出したいシーンを順番に書いてる」ってだけなんでしょうね。唐突に浅野ゆう子が登場して女の哀愁を語り、そのまま踊り出すシーンはその象徴です。お前の話なんて聞いてません。ていうかお前誰だよ。さっきまでいなかったじゃんか。

 というわけで感情の起伏が重要になるウェットなシーンは全くダメダメな映画なのですが、これがヤンキーたちの日常や抗争のシーンになると途端にテンションが上がります。そのポイントは城東のツートップの存在感。特にテルが最高なのです。いやもちろん演技という点で言えば素人同然、というか実際に公募で集めた素人なんですが、その存在感とかキレっぷり、啖呵の切り方の調子くれっぷりなど、何とも見ているこっちの「ヤンキー憧れ心」や「その台詞マネしたい心」をくすぐってくるんです。多分あれですよ、こういうのをカリスマ性っていうんですよ。

 更にそいつらがしでかすのが「ボンタン狩り」ですからね。「城東のボンタン狩りじゃー」 あぁ、何という甘美な響きでしょうか。実際これ見てみんなが真似してたのって、ほとんど城東の台詞でしたからね。小綺麗な顔した主演二人を完全に食っちゃってたってことなんでしょう。また彼ら以外にも、とにかく脇役のキャラクターがよく立っている作品でありました。ちなみに「マンモスのお妙」役で、ジャパン女子プロレス「ミスA」時代のダイナマイト関西も出演しています。

 その他にも音楽のセンスが最低だとか、ヒロシの勝ち方は勝ちとは呼べないだろうとか、中山美穂が前よりちゃんと綺麗だけど今度は老け過ぎだとか、問題は多々あります。だけど面白く感じちゃったので仕方ない。この点数は今どんな仕事に就いているのかもわからないテルと敏光に捧げます。城東は数が多いだけのチンピラの集まりじゃなかったぜ!

(評価:★4)

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