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[コメント] 団地妻 昼下りの情事(1971/日)

コメディとシリアスの調合に失敗しているのではないか。どうにも釈然としない出来。見処は断然ラストで、この撮影でひとりふたり殺してもいいやという刹那感が素晴らしい。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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話が終盤グチャグチャになるのが難点で、これはコメディで纏める一手ではなかったのだろうか。白川和子がコールガールとバレて亭主の浜口竜哉は会社を追われ、前野霜一郎の手下になりコンドームの訪問販売を始める、ぐらいの。

電動コケシから始まって南条マキの有閑マダム怪しく、関戸純方のエロテープ業も胡散臭さ満点で、コンドームの訪問販売する前野と次のカットで南条がマグワっている辺り艶笑譚の快調な出だし。しかし話は残念ながらコメディに進める気はなかったようで、白川の「調教」に重点が置かれる。

しかしこれがどうも冴えない。ケバい付け睫毛の白川は最初からズベ公丸出しなのに、無理してカマトトぶっているとしか見えない。「調教」という余りにもポルノ映画の主題はロマンポルノ第一作に相応しいのかも知れないなあとは思うが(しかし、すでにこの時代、脱がないだけでエロ映画はもう山ほどあったし、日活じゃなけりゃポルノは山ほどあったのだ)。

コメディにしなかったのは、ラストの刹那的転落にシリアスに持っていきたかった、というのもあるのだろう。白川・関戸の抱擁しながらの自動車爆走は素晴らしく、だって関戸は前向いて運転しないんだもの、ヒヤヒヤさせてもらった(何の仕掛けもありませんと自動車の全景まで映される)。この撮影でひとりふたり殺してもいいやという匂い立つ刹那感が素晴らしい。若松ポルノを先達として尊重しているような印象がある。

残念ながら今回観たフィルムは脱落が激しく、このラストも肝心な処がスキップしてしまい、谷底での車炎上がギャグみたいになっていて客席から失笑が漏れていた。歴史的作品なのだからしっかり保存してほしいと思う。

(評価:★3)

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