コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 大殺陣(1964/日)

革命の意志を受け継ぐ者たち。 集団における個人の埋没。東映スターシステムを打ち破った画期的な<安保>時代劇。 様式美だけでなく、殺陣シーンには手持ち撮影を導入するなど、工藤栄一の才気溢れる映像センスも凄い。
AONI

刃を折っても、なお立ち向かう里見浩太朗の執念。この甘いマスクの典型的二枚目スターが、頭から血を流して這いつくばる様には誰もが唖然とするだろう。 一応、里見が本作の主役なのだが、実は彼も謀反集団の一構成員としか描かれない。東映時代劇は徹底的なスターシステムで知られている。つまり、まず「スターありき」の企画&映画作りである。しかし、本作において監督の工藤栄一は、一定の個人ではなく、謀反「集団」に焦点を当てた時代劇を作る試みに成功した。

前作『十三人の刺客』では片岡千恵蔵御大といった豪華スター達に気兼ねしてか、どうしても個人スターに華を持たせる展開であった。(大物スター不在の)本作でやっと、工藤監督が意図としていた「集団時代劇」が完成したのではないだろうか。

安保闘争が激化した60年代は政治色の強い時代劇が数多く作られたようだが、この映画のアナーキーさは出色している。男に体を提供してまで、仲間に引き込む女メンバー。裏切り者の粛正や実行メンバーの悲惨さ。もはや時代劇というよりもレジスタンス映画の趣き。 ※大殺陣シーンで「安保、反対!」の掛け声が足されているらしい。聴き逃がさないように!

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。