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[コメント] アンナ・マグダレーナ・バッハの日記(1968/独=伊)

決して単調な画面ではない。各演奏者の動きの微妙な差異。自分が音を出すタイミングをじりじりと計る様子。楽器を触る指の動き。同じようでありながら指揮者の動きも音楽の流れの中で微かに変わってくる。それら人物たちの影。窓から差し込む陽光。風と空の流れる様子。松明の炎と煙の形状。普段我々が見落としてしまいがちな細部の諸要素の美しさを、ミニマルな視点と長回しによってストローブ=ユイレは教えてくれる。
赤い戦車

そうした動きをずっと眺めていても飽きないのは、恐らく彼らの運動に「意味」が付随していないから。彼らはただ単に音楽に乗っている、純粋に音楽のリズムを取っている、ただそれだけなのだ。だから映画になる。

加藤泰マキノイーストウッド、或いはゴダールフォードシャオシェン・・・そしてストローブ=ユイレ。何れも難解な藝術などではないのだ。映画の楽しさとは物語だけじゃない、他にも愉しみ方はたくさんあるんだよ、と教えてくれる偉大な「娯楽」作家なのだ。そう私は捉えている。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ゑぎ[*]

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