[コメント] 車夫遊侠伝 喧嘩辰(1964/日)
いや、一目惚れとは、すべからく理屈を超越したものであるということを、こんなに見事に観客に突きつける映画が他にあろうか。例えば『静かなる男』の一目惚れシーンでも、モーリン・オハラに恋をしてしまう状況が決して理屈っぽく描かれているわけではないのだが、しかし、少なくも観客に納得できるような造型が志向されていると思える。それに対して、本作では、全く意味不明な本能的と云っていい感情と行動の描写のみ描かれており、観客におもねる部分は全くない。だが、実は一目惚れという状況の本質とはこういうことなのである、と思わせるのだ。また、この一目惚れシーン以上に驚いたのは、後半で、家屋の中の人物を、動く川船の中から狙撃するシーンだ。この現実離れしたいい加減さ!ラストの内田が敵陣へ一人乗り込むシーンの霧の造型も素晴らしい。絶好調の加藤泰だ。
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