原作は、ヒロインの成長過程をじっくり描いた、感動的な物語でした。マラソンシーンやピアノ演奏シーンは本来重いシーンでしたが、映画版では実にさらりと、気の抜けるような描き方をしています。

しかし『久石譲』による極上の主題歌や、監督の演出力によって、雰囲気は最高のものに仕上がっています。プロットに関しましては、原作に対し比較的忠実に作っているわりに、驚くほどつまらなくなっています。ただし、成長過程を削りつつも姉妹のやり取りを新たに追加するなどしているので、一概に減点対象というわけでもありません。

そして、あらゆるマイナスを補ってしまうのが幻想的で美しい映像です。辛口批評の北野武が「俺とは撮りたいものの方向性が違いすぎる」―仁義なき映画論より―といった事を言って批評を半ば拒否していたのが印象的です。そして「ふたり」に欠かせない百合っぽく危うい雰囲気。映画版では極力削っていますが、それでも少し残っていたりします（笑）