[コメント] blue(2001/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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男性には無い、女性特有の感覚的な世界。特にそれが思春期であれば、その柔らかすぎる繊細な感性はもはや男子にとって異次元とも言えるだろう。男子から見れば不思議とさえ思える女性同士の密着感。嫉妬や憧れを多分に孕んだあの関係。そういった女性性あふれる関係を取り上げる場合、とかくネガティブな視点も多いけれど、この映画は丁寧に愛しさを込めてそういう女性特有の世界を描いている事にまず好感が持てる。
自分のフィールドには見当たらなかった新しいタイプの人間と親密になった時のワクワクした気持ち。停学、妊娠、馴染みの無い音楽、煙草など大人の香りと不良性を嫌味なく持ち合わせる事に成功した遠藤というキャラクターよって、キリシマが憧れを抱く視線が説得力を持ち、共感出来る。
キリシマの知らなかった遠藤の世界を共有している中野へのほのかな嫉妬(中野もさっぱりしてて良い味出してる)とか、教師の無神経な言葉にちゃんと言い返せず泣いちゃったりなど、些細な事で感情を揺さぶれる思春期の向きだしの感性が見事に映し出されていた。女子って涙もろくて、特に若い時はすぐ泣く。この映画の登場人物もやたらと泣く。普通やたらと泣く人間を見ると白けるか苛々するものなんだけど、この映画の涙は愛しかったなあ。彼女達の涙は、自分の気持ちを上手に伝えられないもどかしさと、思わず感情が溢れ出てしまう甘酸っぱい若い感覚に満ちてる。大人になるとその場その場で何を言えば良いか、どう行動すれば良いか計算が働くようになってちっとも可愛くないからね。説明的なセリフが白けるように、言葉足らずに湧き出る彼女達のセリフが逆に雄弁に気持ちを伝えてくれた。
キリシマと遠藤が夜の町をひたすら歩く、勢いにまかせて歩く、もはや何で歩いてるかわからないんだけど止まれない二人。その先にまた涙というあのシーン。素晴らしかった。
とにかく全編に渡り、繊細な感受性に満ちていて、経験の無い男子の僕も共感する事ができる何とも美しい映画でした。
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