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[コメント] ラストシーン(2002/日)

小粒ながら佳作。過去の記憶を「思い出」としてはなく、今の情熱として蘇らせる意志が感じられる。
しど

テレビの誕生により、映画業界が衰退していったのは世界的な時代の流れである。しかし、日本映画界の衰退ぶりは他国の追随を許さず、時に哀しいモノがある。

この作品の面白いのは、最近主流な「TVドラマの映画化作品の現場」を描いているところだろう。映画畑出身の中田監督だから、作中の「TVドラマ出身の映画監督」は、案外、リアル&皮肉入りな描写となっているのかもしれないし、全体に漂う「停滞感」も実際に(一部の)映画現場の風景なのかもしれない。たしかにこうした現場からは、面白い作品など生まれないだろう。そんな現場に失望する若手スタッフとそんな現場に慣らされていた古参技術スタッフが、長らく現場を離れていた大根役者の抱く映画現場への最後の想いにほだされる部分は、監督自身の映画に対する情熱なのかもしれない。物事に「終わり」はつきものだが、人に受け継がれることによって新たな「始まり」が訪れる。「ラストシーン」に続く、「ファーストシーン」を撮影しようとする、監督自身の気概を感じる。

非常に私的思いの強い作品だと思うので「売り」は少ないけれど、作家性の表現として味わえる佳作だろう。是枝監督の『ワンダフルライフ』と一緒に見ると、尚更、監督の思いが理解できるかもしれない。

余談だけど、幽霊を登場させるのも監督自身のこの映画に対する思い入れの一つなのだろうか。030829

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ピロちゃんきゅ〜[*]

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