[コメント] シェラマドレの決闘(1966/米)
撮影で私が特徴的だと思ったのは、まずは、シネスコいっぱいの人物の切り返しだ。多くが肩ごしでのショット/リバースショットで、シネスコ画面の左右どちらか半分以上に、肩や帽子を映しこませて、マスキングしている。なので、人物の顔はアップになっているワケではない。これを何度も何度も見せられるのだが、イタリア製西部劇みたい、というコメントも見かけるが、なかなか、こんなにカッコよくやっている例は無いと思う。
あと、主人公マーロン・ブランドの古くからの友人、パコとアナが住む家と農場の空間描写も素晴らしい。パコと子供たちが、向こうから斜面を走ってくるショット。あるいは、家屋内でブランドがアナと会話するシーンの縦構図、画面奥の窓から青空が見えているショットの画作りなんかも、演出は停滞していると思うが、構図の良さだけでウットリしながら見た。
役者の扱いだと、ブランドが川及び川辺でロープを巻かれて馬に引きずられる場面があるが、勿論、多くは代役のショットだが、それでも、かなり、ブランド本人もこなしているようで、これには驚いた。悪役は、まだ若いジョン・サクソンとエミリオ・フェルナンデスだが、サクソンが3年後の『ガンファイターの最後』に比べてもずっと美味しい役柄で、これは嬉しかった。しかし、フェルナンデスがイマイチ活躍しないのは残念。もっとも、ブランドとサクソンとのアームレスリング対決の場面なんかは、もっとスリリングに演出すべきだと思ったが。そしてヒロインのアンジャネット・カマーについては、赤いドレスで柑橘類(ライム?)をかじる場面など、良いシーンもあるが、全般にメキシコ人メイクのせいか、老けて見えるのはよろしくないところだろう(調べると当時27歳ぐらい。 私には40歳ぐらいに見えた)。
邦題の「シェラマドレ」という地名は、画面でも科白でも一切登場しなかったと思うのだが、ラスト近くの決闘シーンが、山岳地帯を舞台とするので、付けられたということだろう(シェラマドレ山脈というのは学生時代、地理で覚えた)。原題は「アパルーサ」で、ブランドが乗っている(所有している)馬の品種名だ。この馬が、ほゞ全編に亘りプロットを駆動するので、原題タイトルもカッコいいネーミングだと思う。エンディングの決闘はちょっとあっけないが、決闘最中に、ブランドが、アパルーサとアンジャネット・カマーのいずれかを選択しなければならない、という状況が盛り込まれるのがいいし、さらに、ラストシーンにいたるまで、私は満足できる仕上がりだと思った。
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