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[コメント] 恐怖の報酬(1977/米)

男たちが地の果てに放逐されるいきさつが丁寧かつ手際よく描かれる。金にからんだトラブルで人を殺めた男たちが、復活のために己の命を報奨金に賭けるという因果。一度、“金”に憑りつかれた者の蟻地獄。フリードキンがクルーゾー版に加えたのは人の性(さが)。
ぽんしゅう

吹き上がる悪魔的なブラックレッドの炎。息苦しいまでに繁茂する植生のグリーン。グレーブルーの幕が立ち込める雨中の吊り橋。立ち向かうのは闇に潜む獰猛な黒牛のような再生された武骨なトラック。

オリジナル完全版で再見。公開時に観たのは92分の短縮版だったそうだ。そんなこと、この完全版が日本で公開される2018年まで(なんと40年間!)知りませんでした。前段の約30分はカットされていたと思う。結末も違っていたと思います。短縮版の細部は忘れてしまいました。でも、当時『フレンチ・コネクション』、『エクソシスト』で偉才を放っていたウィリアム・フリードキンによるリメイクということで、とても期待して観たこと、そして思い切りがっかりたことを、私ははっきり覚えています。

以下が短縮版に対して書いたコメントです。

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力ずくで見るものに集中を強いるクルーゾー版に対して、エピソードを膨らませて見せ場を盛り込むフリードキン版。やはり見たかったのは純度の高いサスペンス映画であって、当時はやりのパニック映画の傍流ではなかったのです。緊張感の質がぜんぜん違った。 ★★★

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雨中のつり橋シーンの“攻防”が(傑出していただけに)あまりに強く印象に残り、前半のパートがカットされた短縮版は、ただの見世物的パニック映画に見えてしまったのかもしれません。完全版では、人智では制御できない天然が放つ色彩と、それに立ち向かう文明、すなわち人の性の象徴としての重機である“傷だらけ”のトラックの鈍重な重量感の意味合いが、全然違っていました。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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