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[コメント] キートンの鍛冶屋(1922/米)

つかみはインタータイトル(字幕)とのギャップの連打。最初に「チェスナットの木の下の鍛冶屋…」と字幕が出、太い木の幹とその横のキートンが映る。
ゑぎ

 カメラがティルトアップすると木は高い高いヤシの木。それを超ロングに引いて提示する。次に腕の筋肉についての字幕。キートンの腕の力こぶが膨らむが、ネクタイピンで刺すと萎む。

 本作は鍛冶屋の見習いとして働くキートンが、作業場に持ち込まれたモノを悉く破損・破壊してくプロットを連打する。まずは、持ち込まれたモノではなくて、入ってきた人だが、キートンに暴力を振るう親方のジョー・ロバーツは留置場送りに。次に、美しい女性−ヴァージニア・フォックスが装蹄のために持ち込んだ白馬。この馬の右側面は黒い油で汚される。別の御婦人も鹿毛(?)の馬を連れて来るが、なぜか変な鞍(パンタグラフ型のスプリングが付いたもの)を装着される。そして、白い高級そうな自動車も白馬と同じ目に合い、さらには破壊される(この白い高級車の破壊はもっと徹底的にやって欲しかったと思ったが)。

 画面造型で特徴的なのは、引いたフルショットと少しだけ寄ったショットをアクション繋ぎのように同一時間軸上で切れ目なく繋ぐ編集だ。これを多くのシーンでやっている。多分、2台カメラのマルチ撮影だろうと推測する。次に、切り返しらしい切り返しが全編で1回しかない、というのは、この頃のキートンの短編ではお約束のように思う。本作では、白馬(右側面が黒く汚れている)を引き取りに来たフォックス(白馬の左側面しか見ていない)が、キートンの汚れた顔を見て、少し笑うアップとキートンとの切り返し。また、白い高級車の破壊パートの途中で、変な鞍をつけた馬に乗って行った御婦人が、泥まみれになって道を歩いている俯瞰の後退移動ショットが唐突に挿入される編集も面白いと思った。

 一方、キートンらしい高い身体能力の見せ場、アクロバティックな運動を披露する場面がほゞなく、そういう点で物足りなく感じる。自動車の車輪を外し、ジャッキの代わりに風船をつけて車体を持ち上げるが(これは勿論ギャグ)、風船を子供がパチンコで割ってしまい、車体が落ちて床が抜け、板が跳ね上がってキートンにあたるシーンと、終盤の馬車馬に引きずられるシーンぐらいか。しかし、これもお約束の、唐突にフォックスとロマンチックな展開となるエンディングでは、汽車の実物と模型を使ったツイスト(捻り)のある構成を見せてくれる。プロットのデザインにプライオリティが置かれた作品だと感じる。

(評価:★3)

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