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[コメント] 街の灯(1974/日)

冒頭、今年(2023年)亡くなった財津一郎が登場する。それだけで感慨に打たれてしまった。その後、いささか鼻につく堺正章のオーバーアクトを緩和させるよにコマ落としのドタバタが続く。1970年代の「違和」を抱えた三世代の悲哀を描く痛烈なポイズン喜劇。
ぽんしゅう

おそらく明治生まれだろう老人(笠智衆)。故郷を遠く離れ生きることで人生を消耗しながら昭和を生きた老獪と、それでも失せないダンディズム。戦災で庇護者を失くし連帯することで戦後の復興機運に乗り遅れまいとする孤児(財津/堺/吉田日出子)たちの無我無心。繁栄の名のもと消費社会のなかで文字どおり消費される戦後生まれの少女(栗田ひろみ)と成長の裏返しとしの貧困によって生み出される戦後の捨て子たち。

この映画が公開された1974年、私は社会の道理をようやく理解し始めた年齢だった。だからここに至る成長と飽和と喪失の「違和」を同時代の空気として実感している。日本社会を強烈なインフレに陥れるオイルショックは前年の1973年秋から始まった。

(評価:★4)

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