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[コメント] アルチバルド・デ・ラ・クルスの犯罪的人生(1955/メキシコ)

過去の異常事にかかるトンデモ批評の連発。『銀河』や『ブルジョアジー』などフランス移動後の傑作群に直結するタッチでもって、意地悪爺さんは人の善意と悪意を揶揄い続ける。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







冒頭、主人公の少年時代が素晴らしい。反乱軍が革命起こしているなか、ブルジョア家庭では銃殺の写真集が捲られ、お芝居に出かける夫人は留守番する息子に、バレリーナが回るオルゴールをプレゼント。精霊の謂われを尋ねられて答えられない、やたら色っぽい家政婦はオルゴールを鳴らすたびに人が死ぬと適当なことを云い、鳴らすと銃声が混じり革命の流れ弾に当たってころっと死ぬ。

そしてこれが現代の病室での看護師への告白にジャンプする。過去の異常事を冷静にかつトンデモに語り合うというブニュエル後期の呼吸がここで成功している。本作はこの手法が頻発する。看護師にナイフを投げるのだが当たらず、彼女は転落死。以下、三角関係の話になり、オルゴールのメロディがオルガンで弾かれたり口笛で吹かれたり。炉で溶けるマネキンの顔が禍々しい。

花嫁を祈らせてピストルで撃つとそれが幻想、というタッチも後期のものだ。ただ、それらが適材適所に置かれ過ぎて出鱈目の渋滞と混乱という処までは行っていない。死を願っただけで相手が死に続けた。最後はオルゴールを湖に沈めるとラビミヤがやって来て、バカバカしいような幸せの予感とともに馬車が走り去るのだった。

(評価:★4)

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