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[コメント] マダムスキャンダル 10秒死なせて(1982/日)

五月みどりがエロエロという以外の感想は観終えて間もなく雲散するどうでもいい映画だが、ロス疑惑とのニアミスだけは興味深い。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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ホンは佐治乾、物話などどうでもいい脚本という仙人のような境地に達しておられたのだろう。それは翌年の『南極物語』を観てもよく判る。

冒頭の英語タイトル、古臭い16ビートのギターカッティングから厭な予感。外は暴風だとヘリの再フライトが渋られている山小屋だが、実際は全然吹雪いていないのがショボい。凍えている亭主の父小松方正を温めようと率先して素っ裸になるマダム五月さっそくの親子丼。電話があって小松の息子中丸信は無事。命懸けの救出に出たヘリの面々は何もフォローがないのが気になるが、そんな人情などどうでもいい映画なのだろう。

亭主の中丸は吹雪で一緒だったのだろう、脚折ったアメリカの姐ちゃんの下の世話して、お礼に胸見せて貰う関係。彼女は洋ピンスターなのだろう。「あきこ、わしはもう、狂ってしまったのだ」と方正はマダムに所構わず迫る。すでに50代後半の方正は枯れていて、なんか痛々しい。これを見てしまった中丸は病院でも看病した彼女の屋外セックスを見て諦念。小便娘道連れにスーパーカーで谷底転落の無理心中は西村昭五郎が『団地妻 昼下がりの情事』のラストをロスで再現したかのようで、この辺りが創立70周年なのだろうか。

西田健は地下駐車場での狂言強姦でマダムと強引に再会。マダムはこの10年前の恋人を詐欺師と知りながら大金を渡すが、西田はヘリのコクピットで交わりながら半額返したりしている。この収束の金のやり取りは何しているのかよく判らず、元から散漫な物語をさらに意味不明なものにしていた。西田は三浦和義に似ているところがあり、ロス疑惑事件は1981年、報道が沸騰したのは1984年だから、本作は偶然にあの当時のロスを記録していることになる。そう観れば、何となく味わいのある終盤ではあった。

マダムはレストラン経営して、さらに方正からクラブの所有権も貰っている。こういうのもバブル期の記録。81年は随分早期の成功例だろう。レストランでは「メキシコ野郎」のボウイを雇い、この恋人が風祭ゆき。メキシコ野郎は金取って逃げて、風祭は追いかけて厨房で馬乗りになる。バブル前夜のロスが一瞬映り、すでに日本語の看板がたくさんあるのが確認できる(レコード文化堂というのもある)。オレンジ暴落で方正の農場打撃、という懐かしい事件も盛り込まれている。セックスシーンはもう80年代なのに擦りガラス系のボカシが大量に入るのが不思議。記念作品の回想だろうか。

(評価:★2)

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