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[コメント] キートンのカレッジ・ライフ(1927/米)

初期衝動としての笑いを追求する原点回帰的なシンプルな作品作りも巧さとして際立つものがなくSO-SO
junojuna

 大作『キートン将軍』の次作となった本作であるが、運動の滑稽をスケッチするスポーツという題材に寄せるシンプルなアイデアと、劇構成の平易な設定など、作品のまとめ方には熟練の域にあると思わせる無駄のない運びとなったが、ここでもナンセンスに飛躍するアナーキーな笑いは影に潜めて大人しく、前作をひとつの到達点として、キートン映画がスケールの大なる次元へ突入するかが伺われた岐路ともいえたこの期に、本作のような原点回帰的でエネルギッシュな逸脱を見せることのない安定した作品を手がけたことは、穿った見方をすればキートンの映画作家としての限界を孕んでいたと見えて残念でならない。作品自体は順風満帆で特段にケチをつける何物もないが、作品に内在する趣そのものが過去の彼のフィルモグラフィの断片的な印象を想起させるにとどまるという体でなんともしがたい風情である。それがまた決して出来が悪くない分だけ、後の彼の作品群を思い当たるところ、この時点がキートン映画の下り坂であったのではなかろうかと訝ってしまう。キートン曰くの「人生最大のミステーク」となるMGM入り前夜の焦燥があったのか、不思議と気に障るキートン作品。

(評価:★3)

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