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[コメント] ラブ・アクチュアリー(2003/英=米)

たとえ呼ばれてもエルトンの所に入ってはいけない事が分かりました。行けるはず無いけど。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 不思議とヨーロッパ製の恋愛映画はするっと入ってくるものが多く、特にイギリスの恋愛映画は結構好きなものが多い。男の情けなさがよく現れているからかもしれないけど。

 それで本作は全然期待せずに観たら、凄く面白かった。オムニバスなので、一つ一つの物語は短く、極めて単純なのだが、それぞれの物語で見せ場と笑えるところ、そして最後はハッピーなオチへと転換させていく。目まぐるしく物語が移っていくため、一つ一つの物語には割と空白時間があるが、その中でもきちんと時間が経過していると思わせる構造はとても面白いところ。全く関わりを持たないいくつもの物語が、それぞれ上手くまとまっていくことが出来るのを観ることが出来るだけでもなんか心地良い。

 やや話としては複雑なメインストーリーのヒュー=グラントの首相の物語も良いけど、他の小さな物語が良い小技を見せてる。それぞれが“愛”に悩みながら、自分なりの答えをクリスマスまでに見つけていく過程が幸せな気持ちにさせてくれる。

 小ネタが多いけど、結構気に入ったのは現役のロッカーで古いスターのビリー(ナイ)が、久々の成功をした時、自分を本当に支えてくれた人が誰だったか。と言う所に気付くシーンなんかは良いね。「エルトン=ジョンの所に行っただけでそんなになっちゃったのか?」という切り返しも素晴らしい。後、「俺がもてないのはイギリスだからだ!」と言ってアメリカに行ってしまったもの凄く単純な話ってのも、あまりのとんとん拍子ぶりに「あり得ないだろ」というツッコミを入れつつ、なんか脱力した笑いが出てくる。オムニバスだからこれも許される物語だな。

 一方、イギリスらしいシニカルなコメディもかなり内包しているのも事実。特に本作はアメリカに対する辛辣なジョークが結構スパイス的に効いていて、「勘違いしちゃいけない。これはイギリス映画だ!」と全身で主張しているようだ。オープニングでわざわざ911の事について語っていることもそうだが、大統領が秘書に手を出しているのを苦々しい目で見ているグラントが「イギリスには数多くの誇れるものがある」と演説をぶっているシーンとかも、現実世界に対するかなり痛烈な皮肉になっている。

 本作はストレートに観ても充分面白いけど、斜になって観ると、ますます面白さが増す。だからイギリスの恋愛作品って面白い…あ、これが理由か。

(評価:★4)

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