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[コメント] のんきな姉さん(2002/日)

まるで邦画とは思えない瑞々しい感性に満ち溢れた作品。監督の創造性は勿論だが、Artisticなカメラのたむら、自然体で演技する役者陣の好演、どこかノスタルジックな匂いを感じさせるロケーションなど調和が見事。物悲しいバイオリンの旋律も詩的な作品の余韻と共に胸に残る。
TOBBY

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作品を通じ感じるのはスクリーンに駆ける監督の自由な創作力。しかし処女作に有りがちな向う見ずな荒削りな感じも無く、丁寧に感情描写や小道具にまで凝っていてラスト迄魅せる。邦画は、わりとストーリーに固執し感覚的な解釈に欠ける場合が多いのだが、本作は近親相姦という扱いずらいテーマを用いながらも、フランス映画のようなニュアンスを伴った表現にサラッと説得力を感じ魅せ、監督の才に敬服。複雑な心情を演じるヒロインの梶原がドライで時にユーモラスで、日本人にありがちなベタベタしたウエット感や切迫感が無いのも好感がもてる。弟を演じた塩田も自然体で演じており、姉との何気ないやりとりなど非常にリアル。今回、再発見したのは、梶原の課長役で登場する三浦友和のコメディリリーフとしてのセンス。ピーナッツの袋を持って、神出鬼没で、その場の状況を読めないところなど滑稽で笑える。前述したが、作品のニュアンスはヨーロッパ的でありながらもロケーションは非常に日本的で、姉弟の住む団地や、川べり、ありがちなオフィスの風景や、古びたアトリエ、姉弟の両親の眠る墓、どこまでも広がる雪原など懐かしみを匂わせシンパシーを煽る。塩田が雪原で足を放り出しカメラに背を向け後方に冬木立の見えるアングルなど絵画のよう。幾重にも現実と虚構を織り交ぜながらストーリーが錯綜しつつ何処にも矛盾がなく、きちんと辻褄が合って終わるのも監督の頭の良さを感じさせる。面白くて劇場で2度も観てしまった。パンフレット800円はでも、ちょっと高いか?。

(評価:★5)

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