[コメント] ドッグヴィル(2003/デンマーク=スウェーデン=仏=ノルウェー=オランダ=フィンランド=独=伊=日=米)
「良識的」な大資本系列映画の見せる一般市民層への性善説的好意のような意識が、まるっきり感じられないから好きだ。この監督、豪腕。何回でも見たくなる。
市民という集団が持つ、剥き出しの敵意や上げ底のモラルや強者に対してとる卑屈さや烏合的意思決定への切っ先鋭い告発にも取れるし、異質の文化や国家(アジア・アフロ社会といってもいいが)に対してとるアメリカ合衆国の基本スタンスや意識の持ちようをニコール・キッドマン&ジェームズ・カーンに象徴して見せたとも取れる。私は後者を取る。しかしどちらに視点をおくにしても内部に対する告発の映画であることには変わりない。住民側に視点を取るか、異邦者側に視点を取るかで見えてくるものは万華鏡のように変わる。一つの意味に落ち込んでいかない象徴性が魅力。装置を思い切って殺ぎ落とし、能や無言劇に近い設定で役者の演技と若干の効果音に大きく依拠した上に、お得意の手持ちカメラの臨場感を持ち込んだ野心と実験精神がみそ。叙情に浸っている余裕なぞ、この監督は与えてくれない。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (1 人) | [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。