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[コメント] ブエノスアイレス(1997/香港)

人生を自分から切り開いていく人もいれば、どんなに努力しても空回りするときもある。かと思えば、タイミングがやって来て否応なしに呑み込まれることもある。...僕にとって、この映画は、人生が何らかのタイミングで切り開かれる瞬間を描いたような、そんな「やり直そう」です。
ゆの

ブエノスアイレスみたよ。**が「言葉にできん」と言っていたのがよくわかる。「自分にすっと入ってきた」というのも、よくわかる。

この映画は、「欲望の翼2」とでも呼べそうな作品よね。つまり、わしゃこれまでは王家衛作品では「欲望の翼」が一番好きだったんよ。でも、ちょっと暗めの終わり方がどっかひっかかっとった。こいつは、なんか観たあと、大げさな言い方だけど、生きる希望みたいなものが、ある。タバコの火をつけるときみたいな、小さな灯。ブレイク。

王家衛*杜可風は、香港を撮るときと香港以外の都市を撮るときは、違うよね。出来るものが。当然と言えばそれまでだけど、多分香港は撮れるものが多すぎて、「重慶森林」や「堕落天使」的な色あいになるんかね。日本でも撮ってほしいねえ。しかし冒頭のシーンは濃いかったね。監督はショック療法くらいの気持ちでとったのかもしれんけど、あからさまに見せられるとちょっと陳腐かもとか思ってしまった。わしはケンカしとるのとか、じゃれてるのとかのほうがおかしくてよかった。

なんせ恋愛にあんなふうにけじめをつけたりふっきれたりすることは難しいと思う。それに、父親とわかりあうことも彼には難しい。私的な感覚で言うと、父親との間には始めから深くて長い溝があって、彼は、それに気付いただけにすぎない。とても近くて代え難い存在だけど、溝を挟んで抱きしめ合うことは、恋人とはできても、家族とはできない。でもそれから逃げられない...

レスリー・チャンがどうしようもない男を熱演しとったねえ。41歳とは信じられんよ。日本にはおらんタイプの俳優じゃね。役所広司といえどもできんじゃろうの。ましてや、ハリソン・フォードなんて以ての外じゃの。あと、張震が超さわやか青年になっててびっくりしたよ。彼の父が「息子も同性愛者役をやるのか?(そうなら参加させない)」みたいなことを言ってたらしくて、天下の王家衛もこりゃ大変だわとか思ってしまった。そういえば最近大阪にはシネシティ香港ができたよ。行ってみたけど、ちょっと狭いかなあ。ギャルがいっぱいだった。ええとこやで。

ポスターのあのけだるく怠惰なグリーンが眼窩から離れん。対照的にひきたつOpとEdの赤。/いろんな色が散りばめられていて、この作品は自分の好きな映画に一気に躍り出たぞ!わしももう一回くらいみたい。けど28日までやねん。1800円はしんどいかなあ。

(評価:★5)

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