[コメント] 忠臣蔵 花の巻・雪の巻(1962/日)
この国で語り継がれてきた最高峰のドラマだけに面白いに決まっている。
誰もが知っているドラマであるからには「どう魅せるか?」がメーカーとしての「売り」だろう。そしてそれは邦画各社にとって所属俳優総出演という映画会社としての面子を賭けた勝負になる。
大映版も良かったが、そこは最後に繰り出した本作の東宝版に敵う訳がない。上記の出演者クレジットは見ているだけで素晴らしく、邦画ファンならば興奮せずにはいられないだろう。そして震えるのだ。
では、監督としてはどうなのだろう。このような誰もが知っているドラマを演出する心情とは?結局のところ誰がどう撮ろうが大勢に影響はない。大きな失敗さえしなければ「忠臣蔵」は間違いなく名作になるのだから。
本作も多くのスターたちの出演場面に配慮したようであるが、三船敏郎の処置に苦慮した他は過不足なくまとまっていたように感じた。
さらに稲垣浩監督は斬新(?)な場面転換技法を用い作品のリズムをアップさせる等こだわりの演出を魅せる。例えば、ボールを投げるカットの次は当然ながらボールを受け取るカットが入る。しかし、受け取る者は時間も場所も異なる場面の俳優なのだ。一瞬、私は戸惑う。筋にはまったく影響しない技法であり、ただただ監督の「粋」な演出だったことに気づく。
ただ、どうだろう。一度二度ならば「粋」だと思った演出も三度四度となると、鼻についてしまう。3時間半もの大作を一気に見せてしまうのは物語の面白さだけでないのは承知している。監督の自然な演出とスピード感ある演出の賜物だと思う。故にちょっとだけ上記のようなささやかな演出が気になってしまった。
それともうひとつ、伊福部昭の音楽は荘厳で良いのだが、彼の作品はどれも皆、同じような「感じ」がいただけない。本作もまた『ゴジラ』をただ変調しただけのような・・・・・
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