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[コメント] オーシャン・オブ・ファイヤー(2004/米)

ヴィゴ・モーテンセンは渋くていいんだけど、馬が勇ましくないし、美しくない。馬を主題にすえながら馬を写すばかりで描いていないのでは、どうにも満足できない。
スパルタのキツネ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







とにかく馬に個性がない。

アルハタルが如何に凄い馬か、台詞による説明ばかりで、映像で訴えていない。娘救出の場面で、偽のアルハタルで欺こうなどとは、それを思いつくほうも、それに騙されるほうも、アルハタルの絶対的な存在を台無しにしている。馬への思い入れの無さを象徴するシーンだった。アルハタルの強さを演出する為に、砂嵐の中を悠然と駆け抜ける姿、救出作戦において自らの意思で悠々と娘を乗せ帰ってくる姿、などがほしかった。アラブ馬の血統書を巡るエピソードなど入れずに、馬の血統を個性で演出すべきだろう。

イギリス女性の所有するもう一頭の馬など、ただ存在しているだけで、その描写はいい加減なこと甚だしい。ヒダルゴの描写も、多いには多いのだけれど、冒頭から最後までこれと言って特記するほどの勇ましさや美しさを感じられず、アルハタルと同じく台詞の説明に頼っているとの感は否めない。

ラストの三騎駆けが最も大きな見せ場にもかかわらず一向に盛り上がらないのは、それまでの道のり(いくらなんでもあれは元気すぎるだろう)や、馬の意思を感じさせないからだろう。 ちょっと前の競馬の話になるけど、マヤノトップガンが制した97年天皇賞春の3強対決(マヤノトップガン、サクラローレル、マーベラスサンデー)におけるゴール前の駆け引きを作者に見せてあげたいぐらいだ。 

ヒューマンドラマとして観ても、脇役のドラマまで中途半端に描いており、テーマが絞りきれていない。奇襲を受ける場面など、守り手の布陣がわかっている状況でそうは攻めないだろうと思えるぐらいの素人作戦。鷹使いの騎手は、脇役の中で一人いい味を出していたと思う。 ラストのムスタングの解放とネイティブとの会話が、本作の一番のテーマのはずなんだが、作品中で語れなかったホプキンスの人生を補足説明するために、とってつけたような気がする。

ただ一点。レースのゴール直前で主人公とヒダルゴが聖域に包まれるシーンは実に美しかった。ここだけ他の全てのシーンから浮いていた気がするのも、聖域を感じさせる効果がありよかったと思う(これを『ヘブン・アンド・アース』のあのシーンで使えば、さぞあの作品の評価はよくなっただろう)。この映像を聖なる馬の演出にも活かしてほしかった。

(評価:★3)

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