[コメント] ぼくは怖くない(2003/伊=スペイン=英)
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何が素晴らしいって、ニコロ・アンマニーティの原作・脚本がすっばらしい。誘拐という犯罪の取り扱いの斬新さ、舞台や小道具、何気ない台詞に籠められた豊穣な文学性(*)、最近観たミステリ系映画の中ではピカイチの出来映えである。日本語訳は当然、もうされてるんだろうな?創元文庫でも、文春文庫(**)でも、なんでもいいからとっとと文庫化すべき傑作でしょう。
ただガブリエレ・サルバトレス監督の演出についてはやや難がある。まず音楽。画面と全然合ってないシーンがある。そしてカメラ。特に前半は横へ、奥へと動かしすぎである。(もしかしたら内田吐夢版『宮本武蔵』へのオマージュなのかも知れないが、それは勘ぐり過ぎってもんだろう)主人公の母親の描き方にも一貫性が欠けている。あんなお色気、全然必要なかったじゃんか。
画面は奇麗である。風景ばかりでなく、空の切り取り方が巧い。ラストのヘリのシーンもSFチックで悪くない。
ただ、やはりこの監督にはもう興味が持てない。次回作も、よっぽど評判が良くない限り、観送る事になりそうだ。
*・・・子供は残酷だ、と云われるが、大人の方がよっぽど残酷である。そんなことは誰だって知っている。ただ、大人はやり方がこっすからいだけだ。この映画に登場する少年達は、丁度、この”こっすからさ”が身に着き始めてきた、そういう年頃だ。青いミニカーの少年の存在が、物語テーマをより峻厳なものへと昇華させている。
**・・・検索してみたところ早川書房から文庫化済みとのこと。原作はやはり評価が高く、本国イタリアでその年最も優れた作品に贈られる文学賞「ヴィアレッジョ賞」を受賞しているとのこと。早速、古本屋を調査だぜ。
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