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[コメント] 東京原発(2002/日)

気骨は十分に感じられる。ただその気骨は、「素晴らしい映画を創ってやろう」という類のものからは、かなりズレている。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







作劇のバランスの悪さとか、キャラクタリゼーションがイマイチ有機性を発揮していないとか、映像に特に見るべきものがないとか、他にも細かいところまでいろいろある。唯一画が雄弁なプルトニウムにもたれかかる日本国旗と不気味な雨も、そこまでの展開がここまで(文字通りに)声高でなければ、おそらく数倍は意図した効果を発揮しただろう、とも思う。ブラックな笑いが徐々に恐怖に引きつり、ラストで一瞬にして凍りつく。その狙いが完璧としか言いようがない『博士の異常な愛情』という映画は、やはり大傑作なんだなぁ、なんてつくづく思ってしまった。

しかしその一方で、テーマとメッセージは非常に興味深く面白い。それを伝えようとする制作者サイドの熱意も感じられるし、実際多くの人に伝わるように作られてもいる。彼らの狙いはある意味達成しているワケだし、そこで映画の出来云々なんてことを言うと、「映画なんかより世の中もっと大切なものがあるだろ」なんて声が返ってきそうな。まあ返す言葉もないですが。でも評点は3が精一杯です。それぞれのメディアには、それぞれの特質に沿った独自の伝え方というものがあると思うからです。自分は映画独自が持つ可能性を信じたいです(大げさですか)。

ともあれ、例えば『国民の創生』などとは真逆な意味合いで評価のし辛い作品でありますが、今井正監督的な熱と志の高さは感じられました(今井正作品の方が映画として見るべき点は多いですが)。

(2006/11/18)

(評価:★3)

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