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[コメント] クロッシング・ガード(1995/米)

事故の加害者と遺族という対称的な苦しみの相似形を掘り下げて、見応えのある良作。自分一人で背負うしかない過去を持つふたりには、友人や女性たちの差し伸べる手も届かない。
ぐるぐる

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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ショーン・ペンは、個々のシーンでは概ね見事な演出ぶりと思うが、全体の構成・編集としては、シーンの関連性を十分に機能させられなかったり、取捨に説得力が無かったりで、結果的にここひとつまとまり切らなかった恨みはある。

銃口を挟んで対峙するふたりが、深夜の街での追跡劇を経てお互いの手を取ったとき、赦しの朝が訪れる・・・のは良いのだが、そこに至るまでの経過の見せ方には無理や無駄も多い。

ただ、全編を通じてうまく機能しているのは小刻みなコメディ・センスで、これが重苦しくなりがちな作劇のテンポを救っていて、そうしたところではジャック・ニコルソンは絶妙だし、石橋凌も大いに貢献している。

撮影はヴィルモス・ジグモンドの基準でも素晴らしいと言えるレベルだが、肝心のラストの画が、デザインとしてちょっと弱いのが残念。「赦しの朝日」は海から昇って欲しい気もするが、舞台が西海岸ではそうも望めない。

同じく俳優出身の監督であってもジャズ世代の感性丸出しのクリント・イーストウッドに対しては、個人的にはどうしても世代的な距離感を感じてしまう部分があるが、逆にロック世代どっぷりのショーン・ペンの感性には親近感がある。その、俳優としての極上の才能が、監督としては「木を見て森を見ず」といった方向に流れる部分があるとすれば皮肉な話だ。

(評価:★4)

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