[コメント] フットライト・パレード(1933/米)
本作の監督は再びロイド・ベーコンに戻り、キャストは3作通じてディック・パウエルとルビー・キーラーのカップル、バイプレーヤーとしてガイ・キービーが続投している。また、本作の全きヒロインであるジョーン・ブロンデルは『ゴールド・ディガース』からの再登板だ。そして、この映画のストロングポイントは何と云ってもジェームズ・キャグニーという最強のタレントの投入だろう。
プロットに関しては、相変わらずブロードウェイでのレビュー公演の成立プロセスを扱っているのだが、前2作と異なるのは、映画産業との共存というテーマが基本にある点だ(さらっとした描き方だが)。キャグニーたちが製作する舞台は、映画館で映画上映前のプロローグとして上演されるショーなのだ。そして同時に、これもまた、トーキー到来に際したショービジネス界の対応を描いた映画と云うこともできるだろう。ちなみに、序盤の、芸能事務所の経営者キビーが、演出家のキャグニーを映画館に案内するシーンでは、ジョン・ウェインの西部劇がかかっている。画面ではよく分からなかったが、ウェインであることは声で分かる。これ(『駅馬車』よりも数年前のウェインの映画がフィーチャーされていること)には吃驚した。ウェインの声の良さも、選択の一因(トーキーという技術革新の脅威の強調)じゃないか、なんてファンの贔屓目で考えてしまう。
さて、中盤までのドラマ部分の画面造型という点では、リハーサル風景で、キャグニーが各部屋を歩いて行くのを壁のぶち抜き横移動で見せるといった面白い画面もあるのだが、概ね、ツーショットと安定した切り返し主体の演出と、ワイプを使った場面転換でキビキビと繋いでいる。極めてオーソドックスな、目立った趣向のない演出と云えると思う。云い換えると、ほとんど、キャグニーとブロンデルの2人のタレント性に頼り切った作りでもある。ただし、タップを披露するシーンをはじめ、キャグニーは、圧倒的なポテンシャルを感じさせるし、このブロンデルの可愛らしさの造型も絶品だ。キャグニーから肩に手を回された彼女のウットリする表情!尚、パウエルとキーラーの2人については、中盤のドラマ部分にはほとんど絡まず、終盤のショーでは主役として登場するという扱いで、これはこれで宜しいが、ちょっと残念な感覚もある。
また、ブロンデルがキャグニーを待たせて着替える際に、ストッキングを履く脚を強調した画面がある。私は、相変わらず脚フェチの趣向かと思ったのだが、後の場面で、演出家のフランク・マクヒューがコーラスガールたちにスカートを上げて脚を見せるよう指示するシーンでは、キャグニーがそれを止め、脚は見せ物じゃない!と云うのだ。これはカッコいい!と思うと同時に、示唆的で面白いなぁと感じた。
終盤のショーの場面は3軒の劇場をバスで回りながら、3つの異なる出し物を見せるという構成だ。まずは、ハネムーンホテルという演目で、パウエルとキーラーが新婚カップルという設定。劇場の舞台から逸脱して、ホテルのフロアや部屋のセットで演じられる。出て来る子供はビリー・バーティ。2つの階の4部屋の断面ショットが面白い。パウエルとキーラーがベッドに同衾して閉じるという、まだプレコード時代だったのだと思い出させる閉じ方だ。続く演目は、矢張りパウエルとキーラーによる森の中の妖精たちのショー。こゝはキーラーが最も美しく撮られている。奥に滝とウォータースライダー。沢山の女性を使って、水中と俯瞰とを巧みに見せる。真俯瞰で女性たちがどんどん飛び込む画面。バークレイらしい幾何学模様のスペクタキュラーは、こゝが一番。3つ目が主演男優の代役をキャグニーが務めるというかたちで始まる「上海リル」。彼が腰から下のショ ットでテーブルの間を歩き、なかなか顔を映さないという演出がいい。酒場。アヘン窟の娼婦たち。水兵たちの乱闘。キーラーとキャグニーのタップ。この後、兵士の行進と星条旗及び、フランクリン・ルーズベルトのリスペクトでアメリカ万歳を演出する部分は鼻白むが、水兵のキーラーがトランプをパラパラとめくってアニメーション風の船の航行を見せる趣向は可愛らしい。キャグニーとブロンデルの舞台袖でのやりとりで締める演出も簡潔でいい。
#備忘でその他の配役等を記述。
・冒頭、キャグニーと共に登場するのはゴードン・ウェストコット。
・ジョン・ウェインの西部劇は『討伐隊』。フランク・マクヒューも出ている。
・キビーの相棒で芸能事務所のもう一人の経営者、アーサー・ホール。
・キビーの妻はルース・ドネリー。その弟にヒュー・ハーバート。マクヒューとハーバートの2人がコメディパート。
・ブロンデルの友人でキャグニーを取り合うヴィヴィアンはクレア・ドッド。
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