[コメント] 有りがたうさん(1936/日)
ともすれば冗長に感じてしまいそうな展開も、斬新なカメラワークがストーリーに引き込む。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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とにかく突出したカメラワークが素晴らしい。片側が崖の山道をクラクションを鳴らして走るバス。バスのフロントガラス目線で見せるその道のりは道の端ギリギリに大回りする。無駄にスリリング!
また突然泣き出した後部座席のお嬢さんを気にかけバックミラーを直す有りがたうさん。そのバックミラーを映すカメラもまた素晴らしい。バックミラー越しに泣くお嬢さんと、ミラーばかりを気にする有りがたうさん。この二人の顔を交互に切り替えるショット。切り替わりのタイミングが徐々に早くなる。とうとう母親に身を持たせて泣き崩れるお嬢さん。その背後には、なんと・・・タダ乗りしている少年が…!なんというスリル!肝がヒャーっとしたかと思うと、やはりバスはハンドルを誤る。ああああ、音楽で盛り上げる訳でもなく、役者の迫真の演技が盛り上げる訳でもなく、カメラ一つでここまでスリリングな展開を見せる事が出来るんだ・・・!
「駅までの20里の道のりの間にこんなにも色んな事が起こるのに、世界ではもっと色んな事が起こっているんだろう」というラストの台詞も良すぎる。
密室での人間模様を描いた作品としては『駅馬車』よりも先だというのにも驚く。
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08.12.18 記
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