[コメント] 土俵祭(1944/日)
まず、冒頭の鹿鳴館のダンスシーンで、クレーンを使って前進・後退移動をする。これがシャンデリアを映しこみながらその下を移動するショットになっており、既にこゝで瞠目。片岡千恵蔵と岸井明が巡業から帰ってきたシーンで、琴を弾いていた市川春代が二階の窓の欄干に移り、千恵蔵らと会話する高低のあるカットも惚れ惚れするし、千恵蔵が玉ケ崎−羅門光三郎の部屋に移ってから、一人稽古するシーンなんかもよく撮れている。雨の中、二人乗りの人力車に図らずも芸者と相乗りになってしまったところを市川春代が見ているシーン、こゝも雨の夜の表現がいい。
本作にしても『殺陣師段平』にしても黒澤明はかなり女性を描きこんでいる。描き方の深みはどうあれ、自身の監督作では本作の市川春代や『殺陣師』の山田五十鈴ほどの比重で描かれる女性は殆ど登場しないのではないか。また、千恵蔵演じる富士ノ山のキャラクタの純粋さ、清廉さは非常に黒澤らしい。多分、原作にもあるのだろうが、富士山への思い入れもそう。
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