[コメント] しあわせの法則(2002/米)
大学卒業後の微妙な時期の恋人たちの「ゆらぎ」を描いた、いわば現代版『卒業』というお話だけど、父親の不在=女・子供の時代、すなわち21世紀という時代の空気が良く出ている。何の「熱さ」もないシリアスさが、妙にリアル。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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いきなりベッド・シーンで始まるのにも驚くが、そこでクリスチャン・ベールの優柔不断な優等生タイプというキャラが見事に簡潔に描かれているあたりからして、演出の上手さを感じさせる。
この米国西海岸の「プールのある家」での出来事に、英国出身3人に東海岸2人という主要キャストで臨むリサ・チョロデンコ監督の脚本・演出には、実はかなり意識的な仕掛けが多いと思うが、それを感じさせずに繊細で親密な空気を保った時間が自然に流れているあたり、非凡な才能を感じた。
主人公が精神科の研修医として接する患者のエピソードに、母親と息子の関係、開放された女性、という、この映画全体の2大テーマ?を象徴するエピソードを持ってきていて、声高な押し付けがましさ無しに、観客に映画の世界をじんわりと浸み込ませようとする戦略。それがもし分な成功を収めていないとすれば、それは多分にケイト・ベッキンセイルの演技の問題が大きいようにも思える。きめ細かなディテールこそが浸透力を生むのではないか?
カタルシスを与えるドラマの機能も、興味を引くエキセントリックな仕立てもなしに、敢えて淡々とした生真面目さで押し通したあたり、作風としては同じアメリカン・ニューシネマの中でも、『卒業』よりハーバート・ロスの初期作品『愛はひとり』あたりに通じる作り。こういう作品が出て来るというのは、アメリカも再び「内省の季節」ってことなんだろうか? 地味だけど味わいのある映画だった。
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