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[コメント] 世界の中心で、愛をさけぶ(2004/日)

ウォークマンは売っててもオープンリールはなかなか売ってないだろうなー。
スパルタのキツネ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







テープに自分の声を初めて吹き込んだことは、自分もよく覚えている。小学生の頃、ちょうど台風の日だった。大雨がやみ強風吹き荒れる中、自室の窓から、それまでの台風の様子と今の状態を風の音が入るように記録した。録音といってもカセットでなくオープンリールの録音機だったが、その時の驚きは、初めて聞いた「自分の声」であった。変な声だと思った。今となっては残念ながら所在不明(あっても再生する装置が無いだろう)だが、当時の風と声を聞いてみたいものである。 本作でも少年時代の朔太郎が自分の声を聞いた時の表情や、作り声をする描写など入れてくれると、もっと感情移入できたと思う。

本作のように、死ぬ死ぬ言ってるじめじめした作品はどうも好きになれないのだが、永澤まさみの笑顔と時折見せる物寂しい表情は自然体で良かった。 彼女のテープの声が次第に語り調になっていくところに、テープを吹き込む際の演技っぽさがなく、病衰によるものと聞いてて自然に理解できるほど、いい声・いい演技をしていたと思う。

気に入らない点としては、冒頭の喫茶店の名前が Enter the Dragon(『燃えよドラゴン』の原題)だったり、高校時代の朔太郎の好きな映画のひとつに『ドラゴン怒りの鉄拳』をいれたりと、ブルース・リーをオマージュする意図がよく判らない。ブルース・リーファンとして、どう考えても本作と共通点があると思えないし、主人公のメソメソしたキャラからも隔離していると思う。

また、律子の洋服のポケットにテープが入っていたのは、律子がテープの配達人だったから、とした演出まではいいと思うのだが、冒頭から意味深に律子の足を引きずらせ、それがあの事故によるとしたのは、律子を無理やり朔太郎と亜紀のロマンスに割り込ませているようでいやらしい。

あと亜紀が憧れたエアーズロックですが、シドニーマラソンを走った次の日に、麓のゲート開門後、味わうことなくトップで頂上に駆け足でたどり着いて満足した私としては、「・・・」と思ってしまいました(笑)。 よく知られていることだと思いますが、あそこは想像以上に急な上り坂で非常に危険なことから(実際年に何人か転落死してます)、天候や風でゲートが開かない日もある。 正直、結局のところ亜紀の体では無理だったと思う。飛行場ではなく、エアーズロックの麓までとしても良かったと思う。 そもそも亜紀は、エアーズロックに上りたかったのではなく、それを観たかっただけかもしれないが・・・。 ラストの場所があそこになったのは、単純に聖地での撮影許可が下りなかっただけでしょう。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ゆーこ and One thing[*]

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