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[コメント] 怒りの葡萄(1940/米)

希望に満ちたロード・ムービー。きわめて同時代性の強い映画だが。しかし、ジョン・フォードの肝っ玉がすこぶる頼もしいGOOD作。
junojuna

男の映画を撮り続けたジョン・フォード。殴る蹴るの応酬の果てに、人物はいとも簡単に死んでいくが、その死の描き方にこそ、人生の哀歓、晦渋を忍ばせて観るものの肝を鷲掴みにする。ジョン・フォード映画に出てくる“男の中の男”はいつでもブレることのない正真正銘である。だからこそ、日々、自分の弱さと向き合わずにいられない現実の“男たち”が、一喜一憂できる懐の深さは暖かい。特に、フォード映画の常連であり、アメリカ映画の顔であるヘンリー・フォンダの線の細さは、さらにその“男の気概”を高めるのに一役買っており、まさに現実的な人生の賛歌として、多くの野郎どもを魅了したのであろう。そんな時、ヘンリー・フォンダのまなざしは実に切ない“虚ろ”を体現する。しかし、その男の前に一本の道はずっと伸びてあり、屈強な壁が立ちはだかる。この時代、“ヘンリー・フォンダ”と“荒野”があれば、映画はいつでも跳ねた。ジョン・ウェインとはまた別の力学が、確たる存在として強烈である。「黙って示し合わせて勝つ」ことの賢さ、カッコよさ。良質な文学が、粋な監督によって映像化され、新たな生命を獲得した勝利を喜びたい。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)モノリス砥石

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