[コメント] ヴェロニカ・ゲリン(2003/米=アイルランド=英)
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本作で描かれたヴェロニカの麻薬組織に対するリスク意識は甘すぎると思う。彼女が本当に「命」を懸けて取り組んでいたかどうか?も定かでない。本作には彼女の人生を訴えてくるものがなかった。
彼女は「自分が恐怖を感じていることを身内以外には知られたくない」と夫に言っていたが、その言葉だけならともかく、それをそのまま遺言を守るかのように映画に反映するのは如何ものか? 少なくとも最初に自宅で銃を構えられた時点で、彼女は死の恐怖に慄き、その顔をヒットマンに見られたはずである。そのときヒットマンがミスショットをした理由も、故意なのか、ヴェロニカがもがいた為なのか不明確。 (ラストも含めて)撃たれる瞬間の彼女の表情を描写しないのは、作品としては不完全と言わざるを得ない。ギリガンの屋敷で殴られ追い出された描写とその後の振る舞いも然りである。彼女の感じた恐怖とそれに屈しない決意を描いてはじめて、ヴェロニカの生き様と死に様を描いたことになるのではないだろうか?
また、組織側の人間描写も甘い。特に白昼堂々渋滞する道路でヴェロニカをヒットさせるジョン・ギリガンは、裁判で係争中になっているのだから、それが自分の破滅をも意味するのは容易に想像できたはずである。暗殺実行時、自室でうつろな表情をする彼の描写からすると、常軌を逸していたと言うことなのだろうが、そこに至る心理描写も大きく不足していた。
あと、カメオでコリン・ファレルを使う意義がよくわからない。娯楽作品を意識しているのならわかるが、何なんでしょうか? やっぱり、何か、ずれてるような気がする。
これまで、魅惑的な女性を多く演じ続けてきたケイト・ブランシェットだけに、彼女が主演する本作には大いに期待していたのだが、『インサイダー』のラッセル・クロウや『エリン・ブロコビッチ』のジュリア・ロバーツには遠く及ばない演技だった。これで全てを判断するのは早計だろうが、彼女はピンではなく、他の個性的な出演人との絡みではじめてキャラが生きる役者なのかもと思うと残念でならない。
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