[コメント] 紅の豚(1992/日)
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主人公が豚と言う一風変わった設定の元、抜けるようなイタリアの空を舞台に描かれる男達と女の物語。レシプロ機同士による空中戦は、いかにもプロペラが好きそうな監督の趣味丸出しと言う感じで、実にのびのびと作られており、古き良き空中戦を演じていた。
実際飛行機が歴史に登場するのは1903年。この時代から僅かに20年程度前に過ぎない。最初に飛行が成功してから10年近く経って実戦配備された最初の頃は飛行機というのは偵察程度にしか使われなかったが(積載搭載ギリギリにレンガを積み込んで、それを敵陣に落としていたと言う時代だってあったのだ)、やがて軽機関銃を搭載されるにいたり、派手な空中戦が演じられるようになった。現代と違い、スピードもそれほど無く、一瞬で勝負が付くのはまれだったので、空中ショー的に本当に派手な空中戦だったらしい。
そう言う古き良き飛行機の里の時代を題材に取ったのは、監督の趣味でもあるが、大成功でもあった。ポルコとカーチスの空中戦は生命の取り合いしているのにも関わらず、何かほのぼのしていて、見てるだけで楽しい。
キャラクターだが、主人公を豚、しかもどえらく渋めの森山周一郎の声を当てているのは最初はえらいミスマッチに思えたが、すぐに本当に格好良いと思えるようになるのも不思議と言えば不思議。それにポルコは男の理想像に近い。様々な苦労を経て、影を負い、それがにじみ出すような渋みへと転化している姿。それに惹かれるのではないかな?男の心の中には、ああ言った雰囲気をまとうことにあこがれる部分が確かにある(せめてああ言ったポーズをしてみたいと思う)。その辺を上手く捉えたのが勝因。(だけど、ポーズじゃない本当のポルコは韜晦しっぱなしで、後悔を押し隠そうとしているだけの男で、愛を欲しがっているのに、自分はその資格がないとばかり思っている小心者であることだって確かなんだけど…疲れそうな生き方だ)
そこに女性を絡めたのは成功だったか、失敗だったか?それで雰囲気が随分軽めになったのは確かだし、ポルコの弱さを上手く表現することも出来たとは思う。
宮崎作品においては珍しく対象年齢が高い作品。それだけに、子供の頃にこの作品を観た人は、大人になってからもう一度見て欲しいと思う。確実に全く別な楽しみ方が出来るし、永遠の子供宮崎駿に共感できる部分を自分の中に発見できるかも知れない。
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