[コメント] 人間魚雷 あゝ回天特別攻撃隊(1968/日)
この映画には尋常ならざる一貫した熱情が漲っている。鶴田浩二演ずる大里大尉は映画冒頭から何としてでも帝国には人間魚雷が必要なのだと叫び続け、そこに日本映画界で最も濃い顔を持つ松方弘樹(2番目は目黒祐樹)がやって来て意気呼応する。2人がパーマン1号・2号の如く連結してからは、映画は怒濤の如く回天突撃まで突き進むのである。「私を狂人と思うかもしれませんが」と鶴田が上申する時、それは「決して狂人の言葉ではないのです」と叫んでいる。しかしその映画の構造自体が狂気を孕んでいるのだ。他の映画には見られる迷いが一切ないこの純粋さは狂信的である。この映画が志村 喬を含めた豪華オールスターキャストで創られている事もまた驚異である。
私は特攻精神が狂気だと言っているのではない。軍国主義そのものがそれ即ち狂気であるとも思っていない。しかし、映画がここまでくると「これは現実ではないし、これを現実としようとするのも現実的ではない」と感じてしまう。現代の視点で創られた戦争映画や時代劇が、屡々あり得ない自由思想で語られている誤りと同様に、この映画も或る恋慕と妄信から創られた虚像である。(これが本当に『出口のない海』と同じ隊の話なのかと思う程の隔絶。…難しいねぇ。)
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