[コメント] スチームボーイ(2004/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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正直、大好きな方には申し訳無いんだけど、予告編が流れ出した頃には全然期待出来なくなっていて、見る前は人に感想聞かれたら何と言おうか、シネスケには何て書こうかなどと映画ファンにあるまじき心境だったんですが、見始めたら、これが意外と悪くない。いや、むしろ面白い。とにかくテンポが軽快で、巨大な蒸気マシンが次々と現れては、ギャリギャリと暴れ回る姿は爽快そのもの。大友カラーも思っていたより出ていて、活き活きとしたアニメ表現は以前に増して洗練された印象。他ならぬ大友作品にしっかりなっていた。
また、極めて個人的な趣味の話だが、ちょうど前年の『リーグ・オブ・レジェンド』(奇しくも監督が『AKIRA』実写化に一時名乗りを挙げていた大友マニアのスティーブン・ノリントンなのだが)なんかにも近いテイストがあったが、戦車(蒸気歩行戦車はもっとじっくり見たかった)が走り回り、装甲兵が出てきたりという「発明と戦争の世紀」の雰囲気が非常に楽しい。何だか不謹慎な発言っぽいが・・・。
ただ、やはり少なからずの不満点も残る。ストーリー的にはもたつきが無い反面、どうも浅さ・薄さ・軽さがちらつくし、弁解の余地無しに『ラピュタ』意識なスチーム城(ネーミングも安易、子供向けだからと思おうにも、「妄執」などと分かり難い言葉を使っていて、今一つターゲットの設定が出来ていない)の飛行にも大きな感動が無い。城が歩き出すのも公開が遅くなったおかげで、『ハウルの動く城』を持ち出されかねないのが何だか不幸。むしろあの城の暴れっぷりは『ロボット・カーニバル』(オムニバスのビデオアニメ、大友がオープニング・エンディングを担当)を思い浮かべましたが・・・でも、それじゃ、今度は「焼き直し」と呼ばれかねないか。また、中村嘉葎雄の下手さも大きな問題。だが、鈴木杏は心配していたほど違和感無く安心出来た。さらに余談ながら、寺島進などは大したもの。
しかし、ファンとして一番物足りないのは何よりも毒気の無さ。別に無理矢理でも毒味付けて欲しかったとかじゃないが、この作品には絶対何処かそういう潜在性あったんじゃないだろうかと思えるので。先ほど「不謹慎」と言ったが、むしろ不謹慎な快楽を押し出しても良かったと思う。映画なんてどうせ不謹慎なもので、偉ぶった所でカッコ悪いんだから。スチームパンクなロンドン大破壊戦争絵巻で。意味があるとも無いとも言い切れない大友風味で。
大満足には遠いけど、悪い予感を吹き飛ばすには十分過ぎる作品でした。せっかく大仕事片付いた事だし、次は軽いビデオ作品でもやって欲しい。意地悪言ってるんじゃなくて、本人も何度と無くやりたがってるみたいだし、まぁ、待たされるのも嫌だし。(笑
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