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[コメント] 大地(1930/露)

ポチョムキン』『』と並ぶ名作の由。デムツキーのキャメラは地平線を取り込んだソ連映画らしい自然撮影に『怒りのキューバ』の先駆と思われる豪快な美しさがある。ソ連が検閲カットしているらしく、話は前衛なのか検閲なのか判らない処があるのが残念。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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革命後も富農と貧農の差がある、という前提、それを克服するための農業機械化、という切り口はエイゼンシュタイン『全線』(29)などでも取り上げられたものだった。ここでは貧農たちと共産党細胞が相談してトラクターを導入、黒煙吹いて荒地を開墾しまくり、脱穀機も導入したらしく活気ある作業風景が「春の祭典」みたいな前衛音楽に乗せて展開される。仰角の接写はドライヤー・アングルと云われるらしい。混声合唱も唄われる。

富農はバカにされていて、「土地は渡さん」と牛みたいに地面に頭突っ込んでぐるぐる回っている。トラクターの主人公は富農に射殺される。ここで太った女が桶から立ち上がるヌードが映される。富農系列の狂女かと思ったが、解説を読むと産気づく妊婦で死と生を並行して描き、検閲でカットされて意味が良く判らなくなっているらしい。

冒頭、死にゆく爺さんと友人の爺さんの「行った先は天国か地獄か教えてくれ」「いいとも」という印象的な会話があり(この爺さん、起き上がって好物の梨を喰ってからおもむろに死ぬ)、残った男は死んだ男の墓に語りかけたりしているのだが、なぜかそれ以上の展開がなかった。ソ連だからこういう死後の世界は妄執と捉えられたのだろうか。それとも検閲だろうか。

冒頭は丘の叢が風にダイナミックに揺れ、向日葵と少女が並ぶ。ラストは梨の果樹に夏の雨の水滴が落ち続ける。『怒りのキューバ』に繋がるソ連映画らしいソ連映画。サウンド版で鑑賞。日本海映画、岩崎昶監修。

(評価:★3)

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