コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 16歳の合衆国(2003/米)

なにげなく見た映画でしたが、今年見た映画の中ではとても秀逸な作品でした。

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







恋人の障害のある弟を殺害した少年の物語。 流行というと、言葉が悪いですが、 近年日本だけでなく世界中で問題視されている”少年犯罪”の内情を描いた物語です。 内容が繊細であるがゆえに、 とても丁寧に、誤りのないように、しかし魅力ある演出で描かれています。 重そう、ですがとても詩的な、『バスケットボール・ダイヤリース』に近いポジションの作品です。

主人公が犯罪者であるがゆえに見ている人間の性か、 主人公のその”理由”にどこかしら納得というか同感を抱かずにはいられない気持ちになってしまう。 ということが少しありました。 しかし、 人間は見ている自分が抱いたその感情同様、 主観的過ぎる。 彼の戸惑いは若さゆえの感受性の豊かさが起こしたもの、 しかしいくらその理由が仮に正しくあったとしても、 彼にはその権利はない。 彼はそれをわかっていた。 だから”理由”はなかったんだろうと思う。 側面は二つ。 しかし、死の権利は神さえもなく当人のみが有するものだ。

「人生はその断片の総和よりも意味がある」

繰り返し述べられるこの言葉に初め感銘を受けたが、 人生は過ぎ去って客観的に眺めた時に初めて使われる言葉ではないだろうか? 私は逆に思う。 過ぎ去った過去は美化されてゆく、それで人生の価値が高いというのか? 一瞬一瞬の日々は悲しみに満ちていても、 悲しみと喜びのプラスマイナスで人生よりもそれが価値の薄いものであったとしても、 総和を恐れるがあまりに悲しみを直視してしまった彼の選択は、 私には当然ながら肯定できない。 そうして、 悲しいのは私が仮のこの事件を客観的に見ている住民だとしたら、 結末を当然の報いとして肯定してしまうであろう。

「遺族にとってはその要因も理由も関係ない。結果がすべてだ、」

とある事件の遺族の方が述べていた言葉をふと思い出しました。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。