親子の仲睦まじい姿を軸に抒情性に富んだ映像が終始観客を魅了する。 重畳的に描かれる大人と子供の世界や数カット使って街中を駆けていくシーンに清水宏の姿がちらつくのは最近私が清水宏の作品をよく観ているからか。これら特徴が実際に清水宏の影響を受けた結果なのかどうかは，私には良くわからない。

　良くわからないといえば，悦ちゃんの水着姿だ。加藤照子は金持ちの娘ということであの水着でもいいが，悦ちゃんは母子家庭で貧乏という設定だっただけに，あの水着姿には驚いた。良く似合ってはいたが。

　印象に残るシーンといえば，運動場の隅で悦ちゃんと加藤照子が両親の秘密を語り合うシーンか。二人の細やかな演技が光る。

　戦時中ということもあってか，台詞回しや演技にもそれ相応の配慮が伺える。 ただ，序盤高田稔が出征に行くかもしれないというシーンと終盤高田稔が出征に行くシーンで見せた入江たか子の表情に成瀬巳喜男の本音が見えた気がする。