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[コメント] ヴィレッジ(2004/米)

寓意に富んだ映画。だがそれについて考えてたら、怖がるヒマがなくなった。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ”鎖国政策”で楽園を築こうという国家モデルだ。ある程度まではうまくいくと思う。外の世界と同じ程度までは。同じ人間がやってることなんだから。ただ、歴史を知る人間なら、これを維持するには莫大な社会コストがかかることを知っている。もし社会がこの負担に耐えられるなら、日本は今でも”鎖国”を続けていただろう。

 さて、長老世代が死に絶え、第二世代、第三世代と進んだとき、この”村”はどんな社会になっているだろう。もはや、長老たちが残した黒い箱にまつわる由来は、誰も知らない。関心は払われず、捨てられ、失われ、たまたま残った形骸だけが、伝説に縁取られる。中の切り抜き記事はまるで古文書と化し、後の世代の人間が読んでも、そこに記される文字、文脈、その世界観を、実感としてリアルに受け止めることができない。そうなったとき、彼らの祖先がかつて帰属しそこから逃げ出したこの文明は、彼らの想像力にどう映るのか。

 失われた高度文明――。世界中の民族が持つ楽園喪失神話の原点がここにある。われわれは、”楽園”を追い出されたのではなかった。われわれは、”そこ”を脱け出してきたのだ。”楽園”を建設するためにこそ。

 いまだそれは建設途上にあり――

65/100(04/10/05レビュー追記)

(評価:★2)

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