確かにジャッキー・チェンのアクション芸がミシェール・ヨーに食われ気味な印象も否めないが、クールでストロングな女性アクションヒロイン像を確立させた点では新境地に達している。さらには敵役の冷酷無人な振る舞いはなかなかに信憑性があってスリル十分であり、中盤まで、敵役と育んでいく関係性における描写は、プロットの施しは見え透いていながらも劇的な効果を生み出すのに成功している。一方でチャン（ジャッキー・チェン）が在籍する香港警察署の人物群との掛け合いは一切皆無となったが、その分、大陸を股にかけてグローバルな視点により、一枚厚みのある世界観の創造が可能となった。スタンリー・トンのアクション演出もセンスを感じさせるカメラワーク、カット割り、編集で、以降のジャッキー作品の風合いをある意味決定づける嚆矢となった。また、毎度毎度、大ピンチの原因ともいえるマギー・チャンだが、回を追うごとにチャーミングさを増してなんとも愛らしい。息抜きとして見れるシーンかと思いきや、大ピンチを呼んでくるプロットという、この辺がジャッキー映画らしさを感じさせるほほえましさでもあり、偉大なるジャッキー・チェンの優しい男の美学でもある。