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[コメント] ブラックレイン(1989/米)

ただのネタでしかないにしても、ハリウッド映画で「黒い雨」について触れられたのは画期的だっただろう。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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若山富三郎マイケル・ダグラス相手に回想する。10歳のとき防空壕に三日閉じ込められ、そこを出たら街がなくなっていた。お前らは日本に黒い雨を降らせ(広島長崎の認定外の原爆被害の意)お前らの価値観を押しつけた。我々は自分を見失い、佐藤(松田優作)のような奴等が大勢生まれた。その仕返しをしている。

このヤクザの大将はいまだに定型のアプレ論を吐いている訳だが、このとき映画は優作が在日コリアンということを含みにしていただろうか。ダグラスがこれに直接答えないのは不満。これ以上のことを云い切る腹積もりはできていなかったのだろう。

ダグラスはただ居場所を教えろ、俺に友人の仇を撃たせとろと云う。富三郎は拳銃を渡す。この決闘場は古の神社風で吉野ケ里遺跡みたいだ。終盤は突撃してくる農民武装軍団が何か判らずカオス状態。優作は指詰めしても痛くないのだろうか。予告通りバイク競争、優作は殺されずコメディで終えるが、着地点がこれでは生温かっただろう。アプレをアメリカはどう始末するかが問われたのだから。

このように肝心の処は温いのだが、娯楽作としては上々。内田裕也の飛行機内での引き渡し書類の宛名は西日本不動産事務局といういいギャグ。この優作引き渡しは、普通は現地語が堪能な刑事が行くものだろう。裕也が梅田阪急をバイク乗り回すなんて小ネタは愉しいが、しかしなんでヤクザなのに暴走族なのだろう。なんでマイケルも警官のくせに冒頭、バイクでお小遣い稼ぎをしているのだろう。

グリコからモータープールまで東洋の電光掲示板が、この監督らしい芳しい借景美術。光が差し込む換気扇が回る画とか、市場も道路清掃車も屋台村で食べ方に文句云う老人も見覚えがある。冒頭は意味のない記録に見えたデコトラが中盤再登場し、裕也の逃げ込む製鉄所では仕事している。製鉄所での背景に火花飛び散るドンパチは、若山富三郎以下のヤーサンは製鉄所に寄生しているという意味を発生させている。産業ヤクザなのだろうか。それはたぶん違うだろう。しかし神山繁(好演)の警察上層部がヤクザとツーカーという理解は正しかろう。どこの国もそんなものなのだろう。

ダグラスと高倉健との友情物語は定型。可愛いカクテル呑んで酔った健さんはダグラスに絡む。「自分のことよりチームのことを考えろ、日本人のように」「いまのアメリカにあるのは映画と音楽だけだ。日本は機械を作って未来を築き平和を手にした」「新しい考えを持つ人間は押しつぶされているんだろ」とダグラスは返す。ありがちな日本人論だが、後半、それが予言だったかのように健さんは停職処分になってチームから外される。ダグラスは思い切って飛び出せと助けを求める。健さんは断るが、土壇場で駆けつけるだろう。『野性の証明』のレンジャー隊のようだ。高倉に尋ねられてダグラスが隠していた盗みをぼろっと告白する件はいいものがあった。

(評価:★3)

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