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[コメント] 笑の大学(2004/日)

検閲官と劇作家の対決は、前者を編集者、クライアント、プロデューサー、裁判所、映倫、PTA、スポンサー等々に置き換えて考えれば、相当に普遍性のある劇と言える筈。創作する者必見。映画として面白いかは別問題だが。
煽尼采

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たぶん舞台では、検閲官が「私はこういうものはサッパリ分からない!」と言う時、他ならぬ「こういうもの」を観に来ている観客と、脚本家や出演者らとの間に、奇妙で複雑な共犯関係が生じていたんだろう。この物語の前に、映像の壁は余りに厚く感じられた。検閲官と劇作家がアオカンこと青空貫太(アオカンって、下ネタですよね?)の芸風に疑問を呈する所などは面白い。検閲に対抗していた話が、いつの間にか、つまらない才能しかない座長との闘いに転じていっているのが、可笑しいと同時に、これはこれでまた切実で現実的な問題でもありそうだったから。全体的にも、大笑いは無いものの、所々、クスクスと笑えたので、まぁ取り敢えずその辺は大目に見たい。

検閲官役の役所広司の演技は、いかにも役所的な折り目正しい調子が妙に心地好く、提出された原稿を手に「拝見」と言うその感じなどが一々ピシッと決まっている。対して劇作家役の稲垣吾郎は、細い体に細い声、いかにも文学青年といった雰囲気で、生真面目で厳格な検閲官に俗っ気で対抗する大衆作家という役にはいまひとつ。僕が、彼と同じくらいの知名度と人気、話題性に配慮してキャスティングするとすれば、キンキキッズの堂本光一かな。いや、『スシ王子』は観てないけど、なんかちょうど良さそうだ。

劇作家が検閲官に、自分の考える「闘い」についての心情をとうとうと述べる場面では、言いたい事には共感するものの、劇として甘くなっていないか?と疑問符が浮かんだが、続く検閲官の冷厳な態度と、「一切の笑いを排した台本を書いて下さい」という究極の命題を突きつける展開に、一気に緊張感が最高潮に。ここで終わっていてほしかった。後のエピソードは、それこそ大甘。

(評価:★3)

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