抗えない運命を知りながらも彼の前に現れる彼女の姿は確かに凛々しかった。

しかし、あのシーンは彼女にとっての一断片でしかない。あの決意から死に至るまでの生活、そこにこそ、なんとか運命に抗おうとする彼女の日々の闘いがあったのではないか。映画はエモーショナルなものであってほしいと願う私が観たかったのは、アメリカンニューシネマのように運命に抗おうとしてもがく若者の姿であった。そうした部分が映し出されることで、あそこでの彼女の決意がより印象をもって思い出されるのではないか。

ものすごく魅力的な題材が揃っている設定ながら、結婚式のビデオのような、小綺麗なシーンばかりでまとめられたのが残念であった。