[コメント] どついたるねん(1989/日)
加えるなら彼らだけでなく、大和武士と大和田正春というボクサーの起用も含めてだ。全体として「面白いことやるなぁ」と強く心打たれた。今回、スクリーンで再見する機会を得、やっぱり面白く見たけれど、かつて感じたパワーについては冷静に受け止めることができたと思う。
まずは、リング上でのファイトシーンのカメラワーク。これが今見てもとてもいいものだ。フルショットからウエストショットへのカッティング、仰角俯瞰の使い分け。スローモーションはほとんど無い。ラストのクライマックスでも、スローはほゞ1回だけ、というのも私の好みだ。こういう実録的な演出をきっちり効かせた上でのケレンというのがポイント高い点だろう。例えば、序盤と終盤に2度出てくる、相楽晴子の祈りで稲妻が走る演出。こういったナンセンスさが、より活きてくるのだと思う。相楽晴子の造型の充実も、本作の分厚い面白さによく貢献しているだろう。
脇役の存在感ということでは、なんと云っても原田芳雄だ。本作の最も亢奮する場面は、ラストの試合以上に、試合前日の赤井と原田とのスパーリングシーンかも知れない。こゝの迫力には、心揺さぶられて涙が溢れてしまった。また、最も良いショットは、相楽が原田に、赤井を止めるよう頼む場面のシーケンスショットじゃなかろうか(原田が小学生の男児2人にボクシングを教えている場面)。本作の原田も屈折したキャラクターで、どちらかと云えば優しい男を演じているが、こういう役でも抜群の存在感を発揮する。
あと、いくつかの反復の面白さを書き留めておきたい。上にも書いた稲光の演出もそうだが、例えば、通天閣の使い方で、序盤に赤井と美川憲一、終盤では赤井と相楽が、それぞれ2人だけで上るシーンがある。あとは唐突なビンタの反復は分かりやすい例だろう。相楽が赤井にビンタされるのは当然としても(?)、赤井も門下生の母親からいきなりビンタされる場面がある。あと、美川憲一が付き人みたいな升毅をビンタするシーンは意外性があるし、上述のシーケンスショット内で、原田が小学生の男児の母親からビンタされるのは、赤井のビンタシーンと対になっていて可笑しい。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。