[コメント] 17歳の風景 少年は何を見たのか(2004/日)
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東京からはじめて両側大雪の舗装道を延々走り、冬の海に至ってなお走る。単純に光景が美しいのもいい。海に砂浜から自転車で突っ込む画がいい。ヤケッパチなのだろう。
母親殺しからの逃亡だと徐々に確信させる作劇なのだが、それとは別に、17歳の有り余り持てあます体力ってどこまでも自転車漕がせるものだなあという呆れたニュアンスがある。怠け者の大人は決してチャレンジしたくないサイクリング。この体力が凶行に至らせた。
夜の駅舎での針生一郎の告白は、柄本に死の影を見たという脈絡はあるが、脚本ではなくて本人が勝手に喋るのだろう。「俺も17のときは戦争中で死ぬことばかり考えていた。しかし実は日本人は死んだより殺した方が300対2000で多いんだ。みんなゴマカシているんだよ。そして戦争を仕組んだ天皇制も倒せない。ゴマカシを温存した自民党のゴマカシのうえにある日本さ、まあ自転車の旅もいいんじゃない」。
雪かきして貰えない在日コリアンの関えつ子は俳優。このタッチはドキュメンタリー寄りで「新日本紀行」っぽさもある。
助監督が白石和彌、監督助手に脚本も書いた山田孝之の名前がある。副題から足立『略称 連続射殺魔』(69)が連想され、これが作意だろう。冒頭のラーメン屋の件で出てくる金属バット殺人を集めた新聞記事には犯人が「小6」って文字も見えた。有名な神奈川の両親殺害は1980年。
最後は自転車壊しちゃって、それでも担いで竜飛岬登る。前に進む以外のことは考えたくない、立ち停まって考えたくないのだ、と伝わってきて哀しくなった。
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