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[コメント] 銀のエンゼル(2004/日)

他でもないミスターが北海道で映画をつくるのだから、やっぱりもっと北海道北海道した映画を撮ってほしいのだ。
林田乃丞

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 小日向の手堅い「頼りなさ」に加えて脇役のキャスティングが秀逸で、受ける印象は決して悪くない。特に村上ショージと山口もえは絶妙と思った。脚本の完成度は高くないんだけれど、個性的なシーンもいくつかあって、いわゆる「感じのいい」映画である。

 ただ、この個性の出し方がちょっと裏目に出てる気がした。具体的にいうと、原チャを連ねてやってくるダンサーたちをおっかない暴走族風に見せたり変なドレスを着た客を登場させて笑いを誘ったりという演出は、意図は解るのだけれど逆に物語の深度を薄めている気がするのだ。これらの余計な(?)遊び心のせいで、本来映画の中で「異分子」として存在するはずだった西島の役柄が舞台背景に溶け込みすぎてしまい、物語のダイナミズムを損ねていると感じた。こうした映画の細部に施されるサービス精神のベクトルは、ミスター映画の中ではもっと「北海道であること」に向くべきというか、その土地にアイデンティティを求めたほうが映画監督鈴井貴之の存在感を示せるんじゃないかと思う。

 つまりは、例えば「大林宣彦の尾道映画」や「中江裕司の沖縄映画」みたいに、「ミスターの北海道映画」という一ジャンルになりえる可能性が充分にあると思うのだ。だからこそもっとあざといくらい北海道の生活者にしか描けない生活感を演出してほしいし、同様に「コーエン兄弟のブシェーミ」みたいに大泉洋という役者の多面性を引き出してほしい。だって世界広しといえど、ミスターほど大泉洋の面白さを知ってる演出家はいないはずでしょ。「水曜どうでしょう」ずっと観てただけに私が勝手に親近感を抱いている監督であるので、期待を込めての★3です。

(評価:★3)

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